その先の「暮らし」までつなぐ医療

救急医療
救急医療は、院内外を問わずあらゆる緊急事態に対応し、どのような状況でも冷静に初期診療を行うことから始まります。
当科では、ABCDE(気道・呼吸・循環・意識・全身)の異常を的確に見極め、重症度を判断しながら同時並行で対応(マルチタスク)を行っていきます。
診断に固執せず、その場で最も適切な判断と決断を重ね、救命へと導く力を大切にしています。
また、多職種と連携しながらリーダーシップを発揮し、救急隊との協働やメディカルコントロール、教育を通して地域の救急医療を支えています。
さらに、初期対応にとどまらず、その後の診断・治療や生活背景まで見据え、患者さん一人ひとりに向き合いながら医療を届けています。
総合診療
総合診療は、臓器や疾患にとらわれず、患者さん一人ひとりの背景や生活も踏まえて、個別のゴールを設定し、最善の診療を提供します。
発熱や体重減少、検査値異常など臓器が特定できない未分化な症候や、複数の臓器にまたがったり、心理社会的課題が併存したりする複雑な健康問題に対応します。
外来では、地域の医療機関や院内他科からの精査依頼の紹介をお受けして、診断やマネジメントに取り組みます。
病棟では、救急外来から入院した未分化な症候や急性期複合病態、下降期慢性疾患などの複雑性の高い病状を持つ患者さんに対し、質の高い病棟診療を実践します。
院内外の医療・介護・福祉の多職種と連携して力を合わせ、診断から治療、その後の生活まで切れ目なく支えます。
患者協働の医療
私たちは、患者さんやご家族とともに医療をつくる「患者協働医療」を大切にしています。
救急の現場では、突然の出来事の中で意思決定を迫られる場面も少なくありません。そのような状況だからこそ、対話を重ね、想いに寄り添いながら、ともに病気と向き合うことを大切にしています。
患者さんがこれまでどのように生きてこられたのか、何を大切にされているのか。その人生観や価値観を、ご家族とともに丁寧に共有し、理解を深めたうえで、納得できるかたちで治療方針の決定へとつなげていきます。
ERでの治療にとどまらず、不安を抱えるご家族にも目を向け、看護師やソーシャルワーカーなど多職種と連携しながら、こころのケアにも配慮します。
たとえ治療が難しい状況であっても、最期までその人らしく過ごせるよう支援し、一人ひとりに丁寧に向き合ってい きます。
院内急変対応
院内で急変が発生した際、病棟などの要請場所へ医師・看護師・救急救命士が迅速に出動し、全身状態の評価から初期対応、専門診療科との連携までを一貫して担います。
また、特定行為研修を修了した看護師で構成されるRRS(Rapid Response System)と連携し、状態悪化の早期発見・早期介入を行い、重症化の予防にも取り組んでいます。
臓器別にとらわれない視点で患者さんを診療し、多職種チームとして支えることで、重症化の回避と現場の安心につなげる、院内のセーフティーネットとして機能しています。
医療者教育
救急科の教育活動
当科では、院内および地域の医療従事者に対し、実践的かつ体系的な救急医療教育(OFF-JT)を積極的に展開しています。外傷初期診療から災害医療、内因性救急まで幅広い領域をカバーし、地域全体の救急対応力向上に貢献しています。
実施しているトレーニング例
外傷
心肺蘇生
内因性
災害医療
医学生、研修医、看護師、救急救命士をはじめとした多職種に対し、実践的な教育機会を提供しています。
浜松医科大学救急科は、教育を通じて「地域の救急医療・災害医療の質を底上げすること」を使命とし、今後も継続的な人材育成に取り組んでいきます。
総合診療科の教育活動
患者をジェネラルに診る総合診療の診療スタイルは、すべての診療の基盤となります。
私たちは、医療面接、身体診察、臨床推論、標準治療、病棟管理、EBMといった基本的な診療能力に加え、患者中心の医療、予防医療、多職種連携など、患者を全人的に診るための臨床アプローチを体系的に教育しています。
こうした教育は、大学・大学病院にとどまらず、地域の病院や診療所、在宅医療の現場でも実践しています。
総合診療・家庭医療の実践と教育を目的に設立された、菊川市・森町・御前崎市・藤枝市の4つの家庭医療センターは、私たちの教育の中核を担う拠点です。
また、医学生や研修医に対しては、実際の診療に参画しながら学ぶ実践的な教育を提供しています。さらに、総合診療分野における学術研究や地域活動についても学び、幅広い視点で医療を捉える力を養います。
移植医療
当科では、移植医療にかかわるすべての方の「意思」を尊重し、患者さんとそのご家族に寄り添った支援を行っています。
移植医療の現場では、「臓器を提供する」または「臓器を提供しない」「臓器移植を受ける」あるいは「臓器移植を受けない」という4つの権利が存在します。私たちは、これらの権利をすべて平等に尊重し、正確な情報提供と意思決定支援を通じて、ご本人とご家族が納得のいく選択ができるようサポートします。
臓器移植は、患者さんとご家族の尊い意思によって支えられる医療です。
現場では、ご家族に寄り添うとともに、医療者同士が支え合える体制づくりも重要です。また、臓器提供の機会は限られているからこそ、関係機関や地域と連携し、経験や知見を共有しながら支援体制を築いています。
院内の体制整備と教育にも取り組みながら、一つひとつの尊い意思を未来へつないでいきます。


8,926名

5,102名

3,824名

3,223名

653名
2025年度実績

災害医療は特別ではなく、
日々の救急医療の延長線上
にある実践です。
静岡県は大規模災害が発生する可能性が高い地域であり、平時からの備えが不可欠です。
当科では、日々の救急診療を基盤に、災害時にも機能する医療体制の構築に取り組んでいます。
2020年、ダイヤモンド・プリンセス号における新型コロナウイルスの集団感染は、日本における初期の大規模感染対応として大きな課題となりました。
当科の医師も現地支援に関わり、限られた情報と資源の中で感染対策と診療を両立しながら対応にあたりました。このときの経験は、極限状況における判断や葛藤、現場での連携の重要性として記録され、映画『フロントライン』のモデルの一つにもなっています。
現実の医療現場で積み重ねられた経験は、その後の感染症対応や災害医療体制の強化にもつながっています。映画『フロントライン』で描かれた救急医療の現場。そのモデルの一人が、浜松医科大学救急部の高橋善明医師です。
2024年1月に発生した能登半島地震では、広範囲にわたり医療体制が大きな影響を受け、多くの被災者への迅速な対応が求められました。
当科はDMATとして現地へ出動し、限られた医療資源と情報の中で、重症患者のトリアージや初期対応、搬送調整などを担いました。
ライフラインが不安定な環境下においても、地域の医療機関や行政、自衛隊などと連携しながら、継続的な医療支援を実施。日々の救急診療で培ってきた判断力と対応力を基盤に、被災地の医療を支える役割を果たしました。